チョウと食草 - 生物多様性ふくおかウェブセンター

チョウと食草

チョウの幼虫と植物の繋がり

チョウの成虫を探す時は、花畑に行くかと思います。では、幼虫は、どこを探せばよいでしょう?手掛かりとなるのは、幼虫のエサとなる「食草」です。多くのチョウは植物食ですが、どんな植物でもよいわけではありません。彼らは特定の分類群の植物を食べて暮らしています。食草を見つけることが、幼虫と出会うまでの近道になります。

ここでは、チョウの仲間(チョウとガ)の幼虫に注目し、食草から彼らを探すコツをご紹介します。

痕跡から居場所を推測する

食草を見つけたら、葉に残された手がかり(フィールドサイン)を観察してみましょう。

・食痕(しょっこん)

葉の穴や欠けは、幼虫が食事をした痕跡です。種によって食べ方に特徴があり、丸い穴を開けるものや、葉の縁から食べるものなどがいます。

・フン

葉の上や地面に茶色や深緑色の粒状のフンが落ちていることがあります。フンがある場所の真上や周囲の枝葉には、幼虫が潜んでいる可能性が高いです。

アゲハチョウの仲間の幼虫

植物の葉を食べるアゲハチョウの仲間の幼虫

スズメガの仲間の幼虫

スズメガの仲間の幼虫

ふくおかで見られるチョウと食草

ここでは、ふくおかで見られる代表的なチョウと、その食草を紹介します。

①ナミアゲハとミカン類など

【食草の例】
ミカン類、サンショウ類(ミカン科)

多くの人になじみ深いアゲハチョウです 。幼虫はミカン類やサンショウ類の葉を好んで食べます 。これらの植物は人家に植えられることが多いので、街中でもよく見られます。

ナミアゲハの幼虫

ナミアゲハの幼虫と成虫

ナミアゲハの成虫

 

②アオスジアゲハとクスノキなど

【食草の例】
クスノキ、タブノキ、シロダモ(クスノキ科)

ナミアゲハをはじめとする多くのアゲハチョウ類の幼虫はミカン科を好みますが、アオスジアゲハはクスノキ科を食草とします。幼虫は神社や公園、街路樹として植えられているクスノキでよく見られ、新芽や若葉を好んで食べます。

アオスジアゲハの幼虫

アオスジアゲハの幼虫と成虫

アオスジアゲハの成虫

 

③ジャコウアゲハとウマノスズクサなど

【食草の例】
ウマノスズクサ(ウマノスズクサ科)

幼虫は食草の葉裏などで見つかります。毒性のあるウマノスズクサを食べることでその毒を体内に蓄積し、外敵から身を守っていると考えられています。ふくおかではウマノスズクサが生育する河川の堤防などで見つかることが多いです。

ジャコウアゲハの幼虫

ジャコウアゲハの幼虫と成虫

ジャコウアゲハの成虫

豆知識:脚で味見?アゲハチョウの植物選び

ここまで紹介したように、アゲハチョウの仲間の幼虫は、決まった植物を専門に食べます。
生まれたばかりの幼虫は遠くまで移動できないため、母親であるメスの成虫が、間違えずに正しい植物を選んで卵を産む必要があります。
では、どうやってその植物を見分けているのでしょうか。

実は、ナミアゲハやモンシロチョウは前脚を使うことが分かっています。
前脚の先(ふ節)には味を感じるセンサー(感覚毛)があり、卵を産む前に葉の表面を叩くことで、そこに含まれる成分を確かめています。
つまり、足で「味見」をして、幼虫が食べられる植物かどうかを判断してから、卵を産んでいるのです。

産卵を行うナミアゲハ

産卵を行うナミアゲハと産みつけられた卵

葉に産みつけられた卵

 

④ツマグロヒョウモンとスミレ類など

【食草の例】
スミレ、パンジー、ビオラ(スミレ科)

幼虫は黒い体に赤い模様が目立ちます。毒々しい見た目ですが、毒はなく、触っても刺される事はありません。スミレ類は小さいので、一株だけで幼虫期間のエサを賄うことは出来ません。そのため、幼虫は地面を這ってスミレ類を食べ歩きます。パンジーやビオラなど栽培品種のスミレ類の葉も盛んに食べるため、公園や住宅の花壇でも普通に見られます。

ウラギンシジミの幼虫

ウラギンシジミの幼虫と成虫

ウラギンシジミの成虫

 

⑥オオスカシバとクチナシ

【食草の例】
クチナシ(アカネ科)

スズメガの仲間の幼虫は、お尻に1本の突起(尾角)があるのが特徴です。公園や庭木によく植えられているクチナシを食草とします。食草の根元に散らばる大きなフンを目印に、葉裏や若い茎を探すと見つかることが多いです。

オオスカシバの幼虫

オオスカシバの幼虫と成虫

オオスカシバの成虫

⑦イボタガとモクセイ科樹木

【食草の例】
イボタノキ、ネズミモチ、キンモクセイ(モクセイ科)

幼虫は、公園や生垣にも多く用いられるネズミモチやキンモクセイなどを食草とします。若齢幼虫に複数見られる長い突起がユニークです。この突起は、終齢幼虫(次の脱皮で蛹になる段階)になると消失します。

イボタガの幼虫

イボタガの幼虫と成虫

イボタガの成虫

幼虫・蛹(さなぎ)を持ち帰って観察する場合の注意点

野外で見つけたいきものを自宅で観察する場合は、以下の点に配慮しましょう。

・新鮮なエサを用意する

幼虫はたくさんの葉を食べます。葉がしおれたり少なくなったりしたら、新しい枝に交換しましょう。枝を水の入ったボトルに挿しておくと長持ちします(幼虫が水に落ちないよう、ボトルの口には詰め物をしましょう)。

・幼虫には直接触れない

エサを交換する際、幼虫を無理に引き剥がしてはいけません。幼虫がいる枝の隣に新しい枝を置き、自分から移動するのを待ちましょう。

・清潔な環境を保つ

ケースの底にはフンがたまります。キッチンペーパーなどを敷いておき、こまめに掃除をして清潔に保ちましょう。

・蛹の足場を用意する

幼虫が蛹になる際に適した足場と空間を用意しましょう。蛹の周りに十分な空間がない場合、羽化に失敗することがあります。

・蛹から羽化したら

蛹になったら動かさずに見守ります。羽化後の様子が観察できたら、見つけた場所や食草のある近くの自然へ逃がしましょう。

環境の変化といきもの

特定の植物に依存するいきものは、その植物が無くなると生きていくことができません。
開発による緑地環境の変化に伴い、ふくおかでも数を減らしている種もいると考えられます。
生物多様性の保全に当たっては、いきもの同士のつながりを意識することがとても大切です。

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