いきもの観察入門~海のいきもの編~

海へいきものを探しに行こう

皆さんは、生きているヒトデやカニを、自分の手で触ったことはありますか。

磯や干潟、砂浜をはじめ、海辺のあらゆる環境には、そこに適応したいきものが暮らしています。
岩陰や砂の中を探せば、普段食卓に並ぶ身近なものから、思いがけない変わったものまで、色々ないきものに出会えるかもしれません。
さあ、海辺へ出かけてみましょう。

ルールを確認

海へ向かう前には必ず、その場所で「何をしてはいけないのか」というルールを確認しましょう。

多くの場所で、地元の漁業者の生活を守るために漁業権が設定され、管理されているいきものがいます。知らずに採集すると密漁(違反行為)となり、法的な罰則を受ける可能性もあるため、以下のポイントを必ず事前にチェックしましょう。

① 採ってはいけないいきもの(漁業権対象種)

アワビやサザエ、イセエビ、ウニ、ワカメ、コンブなどは、多くの場所で一般の人が採ることが法律で禁止されています。これらは観察するだけに留めましょう。

② 使用できる道具の制限

都道府県ごとに、一般の人が海で使用できる道具が細かく決められています。
手釣り・竿釣、たも網、くまでなどを用いた採集は認められている場合が多いですが、都道府県によっては一部の漁具・漁法に細かい規則が設けられていたり、禁止されている場合があります。
知らずに使用すると密漁となるので、水産庁がまとめている以下のサイトから、観察を行う都道府県の情報を確認してください。

水産庁「遊魚の部屋」

③ 禁止区域と期間

種によっては、採集して良いサイズや、採取できる海域、期間が決められています。現地の看板なども必ずチェックしましょう。

観察道具を準備しよう

安全に観察するために必要な道具を揃えましょう。

①バケツ・観察ケースなど

捕まえたいきものを観察するための必須アイテムです。手の上や陸に長く置くといきものが弱ってしまうため、必ず海水を入れた容器の中で観察しましょう。透明な観察ケース(プラケース)だと横からも見やすくおすすめです。

②たも網・フィッシュネット

水中のいきものや、海藻の間に隠れているいきものを捕まえるのに役立ちます。

③ルーペ

小さいいきものや、体の細部をじっくり観察するときに便利です。

④その他(あると便利なもの、上級者向けのもの)

・ピンセット
岩の隙間に隠れているいきものを捕まえるときに便利です。

・スコップ・ふるい
砂に潜っているいきものを探す際に役立ちます。スコップで掘った砂をふるいにかけると、小さないきものを見つけやすいです。

服装

海辺は滑りやすく、鋭い岩や毒のあるいきものもいます。海水浴(水着・サンダル)とは違う装備が必要です。

・肌の露出が少ない服・ラッシュガード
転倒時の怪我や、危険生物(クラゲなど)から身を守ります。濡れても乾きやすいラッシュガードがおすすめです。

・帽子
直射日光を遮り、熱中症のリスクや日焼けを軽減します。

・マリングローブ
岩や貝殻、カニのハサミなどで手を怪我しないよう、手袋で保護しましょう。軍手でも代用可能です。

・マリンシューズ
底が厚く、滑りにくい靴を用意しましょう。ビーチサンダルは岩場で滑りやすく、肌が露出するため怪我をするリスクが高く不向きです。

・ライフジャケット
万が一、足を滑らせて深場に落ちたり、波にさらわれたりした時への備えです。

観察場所を選ぼう

陸地と同じように海辺も場所によって環境が様々で、そこに生息するいきものも異なります。

①砂浜

奈多海岸の写真一見すると何もいないように見えますが、砂の中に身を隠すいきものが潜んでいます。足元にある小さな穴や、砂を這った跡を探してみましょう。
カニの仲間や貝類が見つかるかもしれません。
また、波打ち際には貝殻や海藻、魚などが打ち上げられていることがあります。
漂着物を観察・採集するビーチコーミングも楽しめます。

【観察できるいきものの例】
スナガニ、ウミネコ、ハマエンドウ、貝やウニの殻など

②磯(岩場)

勝馬海岸の写真大小さまざまな岩が並ぶ磯は、いきものが隠れる隙間が豊富です。
潮が引いてできる水たまり(タイドプール)は、波の影響を受けにくく、取り残されたハゼなどの小魚や、岩に張り付く貝類などをじっくり観察できます。
石の下には、カニやヤドカリ、ヒトデなどが隠れていることも多く、多様ないきものに出会える場所です。

【観察できるいきものの例】
アゴハゼ、イワガニ、イソヒヨドリ、ムラサキインコガイ、イソギンチャクの仲間 など

③干潟

和白干潟の写真波が静かな内湾などで、潮が引いたときに現れる砂泥地です。
泥の中にはアサリなどの貝類やゴカイの仲間が多く生息しています。泥の上ではトビハゼや、ハサミを振るシオマネキの求愛行動が見られることもあります。
泥や砂の環境に適応した、ユニークないきものを観察できるスポットです。

【観察できるいきものの例】
ハクセンシオマネキ、コメツキガニ、トビハゼ、ウミニナ、カブトガニ、ハマシギ、ヒドリガモ など

ここに注目してみよう

いきものを見つけたら、ただ眺めるだけでなく、以下のポイントに注目してみましょう。生態をより深く理解できるはずです。

① 体のかたちをじっくり見てみよう

いきものを見つけたら、名前を調べるだけでなく、体の「かたち」に注目してみましょう。体のかたちを調べることで、そのいきものが普段どんな場所で、どのように暮らしているのかが見えてきます。

・例:カニの脚と目

ふくおかの海辺でも、よく見られるカニたちを比べてみると、種類によって体のつくりが大きく異なることが分かります。

・ 脚のかたち

海の中を泳ぐ事が得意なタイワンガザミやイシガニの仲間は、一番後ろの脚が、遊泳脚(ゆうえいきゃく)と呼ばれるボートのオールのような形をしています。

一方、海辺の岩場に生息するイワガニやベンケイガニの仲間は、脚の先が鋭く尖っていて、岩の隙間を素早く駆け回ったり、しがみついたりするのに適しています。

ワタリガニ科の写真

水中を泳ぐタイワンガザミ

アカテガニの写真

陸上を歩くアカテガニ(ベンケイガニの仲間)

・目の位置

カニの眼は眼柄(目のつく柄)の先端にあり、眼柄を動かすことによって視野を広げることができます。

岩の隙間などに隠れるイワガニやベンケイガニの仲間は、眼柄が短く、自身の甲羅のくぼみに収まるようになっています。

対して、干潟や砂浜に巣穴を掘って住むオサガニやスナガニ、コメツキガニの仲間は、目が長い柄の先についています。
これは、巣穴や水中に隠れたまま潜望鏡のように目だけを外に出して、周りの様子をうかがうためです。
巣穴から出てくる様子をそっと観察していると、この長い目を活用しているのがわかるかもしれません。

ベンケイガニ科の写真

ベンケイガニの仲間 眼柄が短い

オサガニ科の写真

オサガニの仲間 眼柄が長い

暮らしている痕跡を探そう

姿が見えなくても、砂浜や干潟の地面にはいきものが活動した痕跡が残されています。

砂の上をよく観察すると、シギ・チドリやサギなど、鳥類の足跡が見つかることがあります。
干潟の泥に残るうねうねとした溝状の線は、ウミニナやアラムシロなどの巻貝が這った跡です。

ほかにも、波打ち際には貝殻や海藻、魚の骨などが漂着します。これらは、海の中にどんないきものがいるかを知る大切なヒントです。時にはサメの卵やイカの甲(殻)が見つかることもあります。

干潟の痕跡の写真

巻貝から伸びる移動の痕跡(上)と鳥の足跡(下)

イカの甲の写真

打ちあがったイカの甲

③ 隠れる工夫を観察しよう

天敵から身を守るため、海のいきものには様々な工夫が見られます。ハゼやカレイの仲間は、砂粒と同じまだら模様をしているものが多く、周囲の環境に合わせた体の色をしています。
また、カサゴやヨウジウオの仲間のように、体の模様や形を岩や海草などに似せて環境に溶け込んでいるいきものもいます。

トビハゼの写真

干潟に生息するトビハゼ 

カサゴの写真

岩場に体色を似せると考えられているカサゴ

マナーを守って観察しよう

海の自然を守り、自身も安全に観察を行うために、以下のルールとマナーを心がけましょう。

マナーを守って観察しよう

海の自然を守り、自身も安全に観察を行うために、以下のルールとマナーを心がけましょう。

複数人で行動する
海辺での単独行動は、予期せぬトラブルが起きた際に助けを呼べず危険です。必ず家族や友人など、複数人で出かけましょう。

いきものと環境を守る
観察後は、見つけたいきものを元の場所へ返しましょう。また、動かした石をそのままにするといきものの住処が失われてしまいます。必ず元の位置に戻し、環境を守ってください。

熱中症対策を忘れない
海岸は日陰が少なく、照り返しも強いため、短時間でも熱中症になるリスクがあります。帽子を着用し、十分な飲み物を用意して、こまめに水分補給と休憩をとりましょう。

毒のあるいきものに注意
海には強い毒を持ついきものもいます。
素手で触れると激しい痛みや腫れを引き起こし、最悪の場合は呼吸困難に陥ることもあります。
知らないいきものや、毒があるいきものには決して素手で触れないでください。

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