いきもの観察入門~植物編~
植物を観察してみよう
植物は、逃げたり隠れたりしないため、時間をかけてじっくり観察できるのが魅力のひとつです。足元の小さな雑草から見上げるような大木まで、葉の形や花のつき方などの一つひとつには、その場所で生き抜き、子孫を拡げるための工夫が詰まっています。ルーペ片手に、植物のミクロな世界をのぞいてみませんか。
観察道具を準備しよう
①スケール(ものさし・メジャー)
葉や花の大きさを測ることで、似ている種類を見分ける手がかりが得られます。写真撮影の際、植物の横に添えて撮ると大きさの記録になります。
②ルーペ(虫眼鏡・観察用レンズ)
植物観察の必需品です。肉眼では見えない葉の毛、雄しべや雌しべの形、花弁の模様などを拡大して見ることで、細部の構造を観察できます。10倍〜15倍程度のものが扱いやすくおすすめです。
散策時に持ち歩けるポケットサイズのものが便利です。「雑草」「樹木」「野草」など、ジャンルや季節ごとの図鑑があると、スムーズに名前を調べられます。
観察場所を選ぼう
自分で移動できない植物にとって、生育環境は生き方を左右する最も重要な要素です。環境ごとの「生きる工夫」の違いを楽しみに、様々なフィールドを訪ねてみましょう。
①公園
写真提供:福岡市
身近な観察フィールドです。花壇の植物や植樹された木々だけでなく、石垣の隙間や芝生の中に生えている小さな野草(いわゆる雑草)にも注目してみましょう。
【観察できる植物の例】
カタバミ、ヨモギ、ホトケノザなど
②河原、池沼
写真提供:福岡市
湿地を好む植物や、水流に耐えるしなやかな植物が生えています。秋には穂をつけたススキやオギなどのイネ科植物が群生する様子も見られます。
【観察できる植物の例】
ヨシ、ミソハギ、ヒメガマ、ヒシ、マコモなど
③海浜
写真提供:福岡市
潮風や塩分を含む過酷な環境に適応した「海浜植物」や「塩生植物」が見られます。葉を厚くして水分を蓄えたり、地面を這うように生えて強い風に耐えたりと、独特の進化を遂げた植物たちです。
【観察できる植物の例】
クロマツ、コウボウムギ、ハマヒルガオ、ハマゴウなど
④山地
写真提供:福岡市
標高が低いエリアでは一年中緑の木々(常緑樹)が茂りますが、高いエリアでは冬に葉を落とすブナなどの落葉樹が見られます。日当たりのよい林縁から、薄暗い林床まで、環境の違いに応じて多様な植物が見られます。明るい場所で花を咲かせる植物もあれば、湿り気のある場所を好むシダ植物や草木もあります。
【観察できる植物の例】
タブノキ、ソヨゴ、テイカカズラ、ヤブカンゾウなど
ここに注目してみよう
ただ「きれいだな」と見るだけでなく、植物の「体のつくり」に注目すると、識別の力が身につきます。
①葉の形質を観察する
「葉」は植物を見分ける情報の宝庫です。全体の形だけでなく、縁のギザギザ、毛の有無など、視点を変えて観察してみましょう。
・全体の形
丸い、細長い、小葉が集まって1枚の葉を形作っているなど、まずは葉の全体の形を観察しましょう。例えば桜の葉は1つのパーツのみから成る「普通の葉っぱ」である単葉で、ヤマウコギは小葉が掌状に集まって1つの葉を形作る掌状複葉、サンショウの葉は小葉が鳥の羽のようにつく羽状複葉という形態をとります。
単葉
掌状複葉
羽状複葉
・縁のギザギザ(鋸歯・きょし)
葉の輪郭を指でなぞってみましょう。ここには「鋸歯(きょし)」と呼ばれるギザギザや、波打つ形など、植物ごとの個性が表れています。もちろん、ギザギザなどの凹凸がまったくない、「全縁」の葉をつける植物もあります。
ギザギザの鋸歯
波打つ鋸歯
全縁
葉の表面や裏面に毛が生えているか、ツルツルしているか。触ってみたり、ルーペを使って詳しく観察したりしてみましょう。
ヒメオドリコソウの葉には、柔らかく細かい毛が生えており、触るとふかふかします。一方で、ヤブツバキの葉には毛がなく、光沢がありツルツルしています。

茎への葉のつき方には、太陽の光を効率よく受け取ることに関わる「ルール」があります。植物の葉は重なりにくく配置されており、その配置パターン(葉序)は植物によって異なります。植物ごとの違いを観察してみましょう。
対生(たいせい):茎の節に2枚ずつ、対になるように葉がつく
互生(ごせい):茎(木本の場合は枝)の節に1枚ずつ葉がつく
輪生(りんせい):一か所から放射状につく
この3つの基本パターンがわかったら、枝や茎を真上から見てみましょう。1段目と2段目の葉がつく角度に注目すると、下の葉が光を受け取りやすくする工夫を確認できるかもしれません。
③ 花のつき方(花序・かじょ)を観察する
花が一つだけ咲くのか、稲穂のように房になるのか、アジサイのように集まって咲くのかなど、花の並び方に注目します。
単頂
サソリ型
総状
散形
頭状
肉穂 ④果実の形質を観察する
植物は自分で動くことができません。そのため、果実の形には「種(たね)を遠くへ運ぶための工夫」が詰まっています。風に乗る、動物に食べてもらう、水に浮くなど、多様な方法で種を散布します。果実の形や特徴からその植物の「散布戦略」を想像してみましょう。
液果
豆果
堅果
キイチゴ状果(集合果の一つ)
節果
痩果
⑤植物にやってくる動物を調べる(ステップアップしたい方へ)
植物観察に慣れてきたら、そこに集まる動物たちにも目を向けてみましょう。いきものといきものの繋がり、すなわち生態系が見えてきます。
・虫食い跡を探す
きれいな葉っぱだけでなく、穴の開いた葉っぱにも注目です。「どんな虫が食べたのかな?」と裏側を探してみると、チョウやガの幼虫(イモムシ)が見つかるかもしれません。また、特定の植物しか食べない昆虫も多いため、植物の種類が分かれば、そこに隠れている昆虫の正体も分かります。
・ポリネーター(花粉媒介者)を観察する
花が咲いている時は、蜜や花粉を求めてハチ、アブ、チョウなどが集まります。彼らは食事をすると同時に花粉を運び、受粉を助ける植物の「パートナー」としての役割をになっています。どんな形の花に、どんな昆虫が来ているか観察してみましょう。
・果実を食べる鳥や小動物を観察する
熟した植物の実(液果や堅果)は、野鳥やリス、タヌキなどのエサになります。実をついばむ姿や、地面に落ちた食べかす(食痕)を探してみましょう。動物が実を食べて移動する過程で、種子は消化されずにフンとして排出され、遠くに散布されます。このように動物たちは植物の「種まき役」を担っています。
マナーを守って観察しよう
末永く安全に観察を楽しむために、以下のマナーを守りましょう。




